「勉強しているはずなのに、成績が上がらない」「どれだけ本を読んでも身につかない」
受験生に限らず、勉強熱心なビジネスパーソンでも、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
「かつての僕は、まさにそうでした」。2浪、偏差値35という崖っぷちから1年で奇跡の東大合格を果たした西岡壱誠氏は、自らの経験を振り返って言います。「でも、ちょっとした工夫で、劇的に改善したんです」
教科書、参考書だけでなく、あらゆる本の読み方を根本から変えた結果たどり着いた、「知識を増やすだけでなく『地頭力』も高められる」「速く読めて、内容も忘れず、かつ応用できる」という読書法を、新刊『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』にまとめた西岡氏に、英語が好きになって成績も急上昇する「3冊の参考書」と、その効果的な「読み方」を紹介してもらいます。

 みなさんは、英語は好きですか?  受験生時代、僕は英語がいちばんの苦手科目でした。やってもやっても成績が上がらず、いちばん時間をかけているはずなのに模試の偏差値が50を超えない……そんな時期がすごく長かったです。

 そんな僕の英語嫌いに拍車をかけたのが、「英語の参考書」です。

 とても分厚くて、どのページにもびっしり英語が書いてある。1ページ読むだけで眠くなってしまうんですよね。

 でも、ある3冊の参考書に出会い、それを「特殊な読み方」で読んでみたところ、英語嫌いが直り、成績が急上昇しました。

 今でも何度も読み返すほどにその参考書が好きになったのです。

 今日は、僕が出会った3冊の参考書と、その読み方を紹介させてください。

■英文読解に効く参考書と読み方

英文読解には『基礎英文問題精講』
 「うわ、これ眠くなるわ!!」僕のはじめの印象はこれでした。

英文とその解釈方法が解説された、文字びっしりのオーソドックスな英語参考書、『基礎英文問題精講』シリーズ。みなさんも一度は手に取ったことがあるのではないでしょうか。

 正直に言います。僕はこの参考書で、はじめは挫折しました。

 解説はとても詳しくてわかりやすいのですが、どうしても頭に入って来ませんでした。本自体も小さいので英文の文字サイズが小さく、ちょっと読みにくくてどうしても眠くなる。「やろう!」と思って途中で挫折、ということを何度も何度も繰り返していました。

 でもある日、あることに気がつきました。

 「あれ、この参考書の英文の和訳、めっちゃ面白くない?」

 この参考書、英文の載っているページと同じページ、または次のページに、その英文の日本語訳が載っているんですが、それがすっごく面白いんです。知的好奇心を掻き立てられる、普通に読み物として面白い文が載っている。

 しかもテーマが多彩。政治や経済・社会問題についての英文もあれば、おカネや時間・食事についてなど卑近なテーマにも触れている。そしてそれらのテーマって、「あれ?  こういう内容の文章読んだことあるな?」と思う内容がかなりあったんです。

 「国語でこんな内容の文章読んだな」というものもあれば、「学校で読んだ英文とは真逆の意見を言ってるな」と思うものもありました。

 この問題集に載っている英文は、どれも本当に面白くて、しかも近しいテーマがいろいろなところで語られやすいものばかりだったんです。

『英文問題精講』は「日本語訳」から読む
 そこで僕は、まず日本語を読むことにしました。日本語を読んで、「ああ面白いな」と感じた後で、英文を読む。そのうえで、他の参考書で同じようなテーマの文がないかを探して読む。

 そうやって勉強すると、同じテーマの文が出題されたときに「お!  これはこの前読んだ内容に近いぞ!」とわかって、ちょっと難しい単語があってもだいたい内容がわかるようになったのです。

この読み方を助けてくれたのは、Z会から発売されている『リンガメタリカ』という参考書。これは英単語帳なのですが、「経済」「社会」「医療」など、単語が分野別で分かれて載っていて、しかも言葉の解説まで載っているという優れ物です。この参考書も同時に使うことで、僕はどんどん英語が好きになっていきました。

■文法に効く参考書と読み方

文法には『一億人の英文法』
次の本はこれ、『一億人の英文法』。

 「『話すため』の英文法」を目的として英語のシステムを1からものすごくわかりやすく解説。英語の文法項目を網羅的に説明してくれているすごい良書です。本当にどんな人でも役に立つ1冊で、読み応えもあります。さらにイラストも多く使われていて、わかりやすくて面白いんです。面白いんですが……これ、めっちゃ厚いんです! 

 700ページ近くあって、読了するまでにかなりの時間がかかります。しかも「これを読んだら速攻で英語の成績が上がる!」という参考書でもなく、「I have a pen」レベルの英語から本当にしっかり解説しているので、日々忙しい生活を送っているとどうしても「積ん読」になってしまうんです。

 誤解しないで欲しいのですが、この本、本当に本当に面白いんです。「そうか!  I have a penってそういうことだったのか!」というような、目から鱗な英文法の発見が無数にある、とてもいい1冊なんです。時間と根気があればぜひ、1から全部読んで欲しい。でも、当時の僕は読了することはできませんでした。

『一億人の英文法』は「疑問解決用」に使う
 そこで僕は、この本を「納得感を得るための辞書」として使っていました。

 文法の勉強をしていると、「なんで主語がないと命令文になるんだろう?」とか、「veryとsoってどう違うんだろう?」とか、そういう「ちょっとした疑問」を持つことってありませんか? 

「この動詞はto不定詞とくっつくんだよ!」って授業で習っても「え、なんでto不定詞とくっつくの?」のような、理由がわからなくて「なんでだろう?」と思う体験、皆さんにもあるのではないでしょうか? (ないという方は「元偏差値35の東大生が教える『残念な勉強法』」でご紹介した「つねに考える勉強法」を参照してください)。

 そういう時に、僕はこの『一億人の英文法』を取り出して確認していました。すると、「to不定詞というのはこういう役割がある、だからこういう動詞とくっつくんだ!」と書いてあって「なるほど!」と納得する。そういうことを繰り返していると、自然と「この動詞はto不定詞とくっつくんだよな!」と覚えることができるんです。

 「納得感を得るための英文法の辞書」として使うと、英語の仕組みがどんどん理解できるようになっていったのです。『東大読書』のなかで、僕はこのような読み方を「検証読み」と名づけました。今でも僕は、この本でよく「検証読み」をしています。

■発音とリスニングに効く参考書と読み方

発音とリスニングには『英語耳』
最後はこの1冊、『英語耳』です。この本は、日本人が英語を学ぶ時に軽視しがちな「発音」を学び、「耳」を鍛えるというほかに類を見ない1冊です。

 僕はこの本を、「英語ができないんです!  どうすればいいんでしょう?」と英語の先生に質問したときにおススメされました。でも初めは、「え?  『発音』とか『耳』とか、そんなに重要なのか?」と半信半疑でした。

 受験勉強としての英語では「話す機会」がまったくないので、ついつい発音を軽視しがちです。僕もそのクチで、発音を重視したことがまったくありませんでした。

 でも、この本を実践して本当に成績が上がったんです。リスニングの成績はもちろん、それ以外の成績もどんどん上がっていきました。

 「正しい音」を知るということは、「本当の英語」を知るということです。カタカナで変換された日本語英語ではなく、英語を英語として理解することができるようになることで、英文の理解力も読解のスピードも向上しました。「発音」というものへの考え方がこの1冊で変わり、その影響でどんな英語学習をしているときでも「発音」を意識することができるようになったのです。

 「そうは言っても、他の英語学習より優先して『発音』を鍛えるっていうのは、心理的にちょっと抵抗があるな……」

 もしかしたら皆さんはそう思われたかもしれません。実際、僕もはじめはそういうふうに思いました。でも、だからこそのこの1冊、『英語耳』なんです。

『英語耳』は「第1章」を繰り返し読む
 僕はこの本をつねにカバンに入れておいて、たまに取り出して「第1章」だけ何度も読んでいました。それだけで、「あっ、発音やらなきゃ!」というモチベーションになるのです。

 第1章は「発音の必要性」がコンパクトにまとまっており、これを読むだけで「発音に力を入れたい!」という思いが湧き上がります。そういう「モチベーションを保つための道具」として、『英語耳』はオススメなんです。

■本は結局「読み方」次第で変わる

 いかがでしたか?  どの参考書も、本当におススメのものなのですが、しかし重要なのは僕たち読者側が「その本とどう付き合うか」なんだと思います。

 どんなにいい参考書でも、どんなにすばらしい本でも、「読み方」が悪いとただの「眠くなるもの」でしかありません。逆に言えば、どんな参考書でも、付き合い方がよければ多くのことが学べるのだと思います。

 今回は、「興味のある分野を深めて他の本と組み合わせてみる」「辞書のように、他の本を読んでいる時に理解を深めてみる」「その分野に対する意識を変えて、モチベーションを保つために使ってみる」という3種類の「付き合い方」を紹介しました。

 他にも、本との「付き合い方」にはさまざまなやり方があります。みなさんもぜひ、本とうまく付き合ってみてください!